D3Pオトメ部
2024.04.11 Thu 12:00
『DesperaDrops/デスペラドロップス』制作秘話 第三回「物語」
※本記事は Nintendo Switch『DesperaDrops/デスペラドロップス』のネタバレを含みます。未プレイの方はご注意ください。
※制作秘話含むデスペラ関連記事はこちら
こんにちは。
三度目の登場となります、デスペラドロップスのディレクター、森田です。
前回は長々としたとりとめのない(しかも特に核心に触れない)文章を書いた結果、スタッフから「チェックが面倒です」と冷ややかな視線を送られましたが、めげずに今日も垂れ流しますので頑張って読んでください。
さて、これまでに『企画(コンセプト)』『人物(キャラクター)』と続いたので、今回はいよいよ『物語(ストーリー)』についてお話しようかと思います。
デスペラの物語といえば、皆さんお待ちかねの吉村りりかさんの登場ですよ。
分かっています。「森田、さっさと引っ込めよ」とお思いでしょうが、まぁもうしばらくお付き合いください。後半はすごい事になっていますので!
今回のプロジェクトは乙女ゲームということで、シナリオに関しては最初からその道のプロのライターさんに参加してもらうのは決めていました。というか、プロジェクト開始と同時に真っ先に吉村さんにコンタクトを取らせてもらいましたからね。
なぜ吉村さんだったのかと言えば、もちろん過去のお仕事の実績というのもありますが、なにより文章がとても綺麗だからです。綺麗な文章というのはそれだけで正義です。
そしてコミカルな物からシリアスでハードな内容までこなせる筆の幅の広さ。さらには小説家さんとしても活動されています! なんちゃってシナリオライターである僕にとって、小説家さんというのはもうそれだけで神に等しい存在なのです。
普段、ゲームのシナリオやキャラのセリフなどを書いていると、なんか自分も文章が書けているつもりになっちゃうのですが、それって大きな間違いなのですよね……。セリフってキャラクターを表現する為にはもちろん重要な要素なのですけど、ノベルゲームはセリフだけで構成されている訳じゃありませんから。
主人公の感情の機微や、情景などを地の文で描くには、それ相応の文章力が必要となりますし、今回は僕が普段作っているような『なんか勢いで押し切れる!』という世界観じゃありませんしね。何といってもクライムサスペンスです。
ということで、吉村さんに参加を了承して頂いた時点で僕の仕事は、半分終わったようなものだったのです。めでたしめでたし。
まぁ、初めてお会いする時はマジで緊張しましたけどね……。それも良い思い出です。
ちなみに、今回のシナリオは以下のような流れで作られました。
- 森田:シナリオ構成、各話のプロット
- 吉村さん:シナリオ執筆
- 森田:選択肢やミッションパートのセリフ等を加筆
- 吉村さん:森田の加筆部分の修正、全体の調整
このような感じで交換日記のようにキャッチボールをしながら進めさせてもらったわけです。ちなみに『交換日記』という言葉が使いたかっただけで、別に普通の進行だと思います(他のプロジェクトの事は知らないですけど)。
僕は普段だと「4. 吉村さん:森田の加筆部分の修正、全体の調整」の部分をお願いしないで、そのままアフレコ用の台本に仕上げてしまう事も多いのですが、今回は最終的に全て吉村さんに見てもらうというのは最初から決めていました。だってその方が100万倍良くなりますからね!
『ミッションパート』や『選択肢』については、ゲーム的な仕掛けや全体のバランスも考えなければいけないので、吉村さんのシナリオが上がったら、森田の方でそれらの部分のシナリオを加筆させてもらっていますが、最終的に吉村さんに赤ペン先生よろしくバッチリ手直しをしてもらっていますのでどうかご安心ください。
というかめちゃくちゃ贅沢な赤ペン先生です。とても勉強になりました!
実際のシナリオがどうなっているかと言うと――
①黒い文字:吉村さんによるベースのシナリオ
②赤い文字:森田が加筆した箇所(選択肢など)
③青い文字:吉村さんによる最終調整
という感じで、お互いにどこを追加・修正したのかが分かりやすいように色分けをして作業をさせてもらったので、実際は森田が『赤ペン生徒』で吉村さんは『青ペン先生』だったのですけどね。
今回、吉村さんの特徴的な美しい文体を真似するのは最初から無理だと諦めていましたし、何故か僕が書くミカのセリフは昔のお嬢様風になる(というか単に古臭いだけらしい)と、スタッフからは評判だったので、吉村さんには本当にお手数をおかけしました。
上の写真でも、森田が書いたミカの台詞を、青ペン先生が直してくれています……手のかかる生徒だったと思います。
吉村さんって、当然セリフもお上手なのですけど、それ以上に地の文の雰囲気が僕はすごく好きなんですよね。
地の文ってどうしてもシナリオ的な状況を伝えるために説明的な文章になってしまいがちなのですけど、吉村さんの書く地の文は、どこか詩的なリズムを持っていて読んでいて心地いいですし、ゲーム全体の雰囲気を格調高くしてくれる効果があると思うんですよね。ホント羨ましいです。
さて。今回、吉村さんにシナリオをお願いするにあたって、最初にお話しさせてもらったのが「シナリオはまるっと全部お任したいです」という、割と無茶なお願いでした。
文字数にしたらざっと100万文字以上ですからね。ちょっとしたライトノベル7~8冊分くらいの分量です。
乙女ゲームに限らずですが、ある程度のボリュームがあって、しかも明確に途中でルートが分かれるようなノベル系のシナリオって、ルートごとにライターさんを分けたりするケースも多いのですけど、今回それは想定していませんでした。
ルートごとにライターさんを分けた方が、一人一人のライターさんの負担は減りますし、プロジェクト全体のスケジュールだけを考えれば効率的なのかもしれないのですが、そのやり方って僕はあまり好きじゃありません(というかやった事がない)。
ゲーム全体の文体の統一感というのもありますが、一人のライターさんに全てを背負っていただく事で生まれる『全体の空気感』っていうのが絶対にあると思うんですよね。どこかのパートを書いてもらうだけだと、キャラクターたちの7人の人生、運命を背負っているという感覚は生まれない気がして……。
まぁ、その分、担当するライターさんには負担がかかるのですけどね。
それを聞いた上で、快諾してくださった吉村さんには感謝です。
……そして、ここからが長い旅の始まりでした(主に森田のですが)。
シナリオは吉村さんが引き受けてくれる事は決まりましたが、まずはどんな物語を書いてもらうのかを決めない事には、いかに吉村さんが神であろうと無茶振りにも程があります。
ということで、まずは物語全体の構成を決めることになります。
デスペラでは共通パートをじっくりと描くと決めていましたが、実はもう一つやりたかった事があるのです。
それが共通パートの前半で、それぞれのキャラクターにスポットを当てたエピソードを用意するということです。いわゆるアニメのお当番回ですね。
それをやりたいが故に、共通パートが長くなってしまったと言っても過言ではありません。
というのも恋愛関係に発展する前段階として、それぞれのキャラクターの人となりをしっかりと見て欲しかったからです。だって出会いが護送車の中ですからね。よほどの事がない限り、そうそう恋愛感情なんて芽生えませんから。しかも相手は犯罪者ですし。彼らにしても色恋ごとにかまけて逃亡が疎かになるようでは魅力半減どころか、マイナスです。
もちろん、世の中には一目惚れというものもあるでしょうが、やはり一緒に同じ時間を共有していくことで相手の事を深く知り、その中で意外な面や新しい発見があって、いつの間にか気になる存在になっていた……というのが自然だと思いますので。
そもそもとして社内のスタッフからは「森田さん、恋愛の過程はマジで気を使ってくださいね! いつの間にか勢いで好きになっちゃったとか、ユーザーさんに怒られますからね!」とえらく脅されていたというのもありますが……。「いや、でも、実際の恋愛っていつの間にか好きになっているんじゃ……」という僕の正論は「乙女ゲームを現実と一緒にしないでください!」という正論で撃沈したとか、していないとか……。
何はともあれ、ガチの犯罪者とお近づきになるには、一人一人の個性や内面を知ることが出来るお当番回っていうのは絶対に必要不可欠!
となると、最低でも共通パートでは6話分が必要になりますし、それ以外にも出会いのエピソードや、危機的状況に陥って盛り上がる展開も欲しいし……と考えていたら、この時点での共通パートはまさかの15章構成!+プロローグ!
現状のデスペラでも共通ルートはかなり長いというのに、それよりもさらに長かったのです……いったい僕は何がしたかったのでしょう?
さすがに共通パートをじっくり描くにも程がある! と思い直して後ほどシナリオの構成については再構成する事になるのですが、実際は後半の二つのエピソードを一つにまとめたりしただけだったりするので、実はそれほど短くなっていないような気もしますが……少なくとも初期の構成では後半の『列車のシーン』以降もしばらくは共通パートが続く予定だったのです。
自分でも久しぶりに資料を見返して「マジか!」と思いました。実際そのまま作っていたらユーザーさんも「マジか!」と思った事でしょう。
結果的には、あそこで分岐して盛り上がる展開になって良かった! と、当時の自分を褒めてあげたい気分です。
実際にプレイしてくださった方は「もうこのゲーム、個別ルートに分岐しないんだろ……」と諦めかけていたかもしれませんが、ちゃんと分岐します! あきらめずにプレイしてくれて本当にありがとうございます。
僕に限らずだと思うのですが、シナリオを作る人間っていうのは、基本的に飽きさせないということを意識します。というか途中で飽きられる事を何よりも恐れます。
そうじゃなくても僕が作るお話って無駄に長くなりがちなので、途中で飽きられたらどうしよう……という不安と常に戦っているのです(じゃ、コンパクトにしろよと思われるかもしれませんが……できません!)。
今回、シナリオは吉村さんにお願いするので、実際の内容は何の心配も無いのですが「そもそもの展開・構成がつまらん」と言われたら切腹ものです。
そこで僕がいつも作るのは、シナリオ全体の盛り上がりをグラフ化して、視覚的にシナリオの盛り上がりを確認できる、その名も『シナリオテンショングラフ』です(←今、命名しましたがそのまんま)。
各エピソードを起承転結の4つのブロックに分け、それぞれのブロックがどれくらい盛り上がるのかを数値で設定し、それを一覧で表示することでシナリオ全体の流れ(盛り上がりの波)を視覚的に表現します。
このグラフによってシナリオを書く前からどこで盛り上がるのかが一目で分かり、シナリオの中だるみを回避できます(正しくは回避できる気がする)。
ただ、その弊害として盛り上がったり落ち着いたりをやたらと繰り返すという『ややクドい』ジェットコースターのようなシナリオ構成が完成する事になりますが、でもそれは毎度のことなので、それが自分の個性だと諦めています。
そしてあとはシナリオライターさんに「さあ、このグラフに合わせて盛り上がらせてください!」と無茶振りすればいいのです。そもそも、この盛り上がりの数値というもの自体が森田の匙加減ひとつだというのに、それに答えてくださった吉村さんはまさに神です。
あと、シナリオ構成の時点では個別ルートに関しては、まだざっくりとしたコンセプトと方向性だけを決めておくに留めておきました。
いや、手を抜いていたわけではなく、共通パートの詳細な内容を詰めていく事によって、それぞれのキャラのルートの具体的な方向性が見えてくるからなのです……たぶん、きっと。まぁ、大変な部分を先送りにした結果、後で自分の首を絞めるってことは分かっていましたけどね。
ちなみにシナリオ構成時での、個別ルートのコンセプトはこんな感じでした。
<アッシュルート>
とにかく逃げて、逃げて、逃げまくる、二人きりの逃避行!
どこにも逃げ場が無い絶望的な状況に追い込まれていく。
<ハミエルルート>
仲間を、警察を、世界をも騙す詐欺師としての一世一代の大博打。
一生、他人を騙し、自分を偽って生きていく覚悟。
<ジブルート>
ジブの過去にまつわる復讐劇。
かつての同僚たちさえも敵になる危機的状況。
<ラミールート>
世紀の大怪盗らしく敵組織から重要な物(未定)を盗み出す。
怪盗&怪盗助手コンビによる爽快な冒険活劇。
<カミュルート>
敵組織の陰謀を阻止する為の革命を実行する。
二人が起こした革命が、やがて世界さえも変える!
<サリィルート>
ハッキングや情報操作で、自分たちの痕跡を消しながらの逃避行。
敵の情報を盗み出し、情報を書き換え、メディアさえも操作するサイバー戦。
<真相ルート>
全員が集結しての最後の戦い。
派手な事件を、チームワークで派手に解決してスカッと終わる。
かなり勢いだけのコンセプトで、詳細が未定である事がバレバレですが、この辺りまで進んだところで、ひとまずレッドのスタッフやD3Pさんに「こんなシナリオ構成を考えています」という確認をします。あまり一人で進めてしまって「いや、そもそもちげーよ!」と言われたら泣いちゃいますからね。
そんなやり取りを経て無事に構成も決まったところで、それぞれのエピソードのプロットを書き始めるのですが、そもそも僕はプロットを書くのがあまり得意じゃありません。その理由として、プロットを書いているはずが、何故かシナリオ(というかセリフ?)を書いてしまうからです。
今回も、プロローグから第1章あたりのプロットを書いていたはずが、普通にセリフまで書いていて、このままのペースじゃ一生終わらない! というか、そもそも今回は吉村さんがいるのだから僕の出る幕はなかった! と慌てて軌道修正。
それ以降はプロットらしく『簡潔』に書くべく心を入れ替えたのでした。
ちなみに画像の左側がいつもの感じで途中まで書いていたプロットですが、この調子ではゲームが発売してもプロットが終わらないという事態になりかねません。ということですぐに右側のように、お話の流れを『箇条書き』するという、かなり味気ないプロットの書き方に切り替えました。
それにしても、こんなお買い物メモのようなプロットもどきからシナリオを書いてくださるなんて、プロの作家さんって凄いと思います。
その調子でミッションパートも、最初にちゃんとしたプロットを作ってから吉村さんにお願いすればよかったのでしょうが、そもそもどんな内容(ゲーム性)のミッションになるのかは割と後半(恐ろしい事にアフレコの直前くらい)まで固まってなかったので……いや、アレって何気に複雑なのですよ……森田の頭には。だって同時に6個のADV画面が動いていますからね。
だから最初にちゃんと設計をしておかないと、シナリオを作ってから「やばい! シーンが足りない! ミッションが繋がらない!」となりかねません。そして僕は『最初にちゃんと設計する』というのが実に苦手です。なので、慎重に慎重を重ねて、設計するのを後回しにしていました。
最終的には気合いでなんとかなるという自信(という名の自己暗示)はあったのですが、追い詰められないとその気合が入らないと言いますか……必要な背景や、どのカメラにキャラクターが映るのか、などを決めながらシナリオを作る必要があったので、本当のギリギリまで引っ張ってしまいました。本当はあといくつかミッションパートは入れたかったのですけどね(まぁ、背景もその分必要になってしまうのですが)……とにかく反省です。
しかもその結果、ミッションが始まると何故かアッシュがボケ出すというあの展開ですしね……アッシュに限らずミッションになると何故か微妙に緊張感が薄れるのは何故なんでしょう? 元々はゲーム全体に緊張感を出すためのミッションパートでもあったはずなのにおかしいですね。
いや、でも彼らはプロの犯罪者だからミッション中でも余裕があるのに違いない!
それに結果的には、より愛すべきチームになってくれたのではないかと思っていますし!
ちなみに、最終的には上の画像の様な資料を作ってミッションパートを設計しています。
これが無いと、どのカメラに誰を映せばいいのか、マジで分からなくなるので必須です。
ところで最初の方で『交換日記のようにキャッチボールをしながら』なんて、良い感じの表現で言っていましたが、実際にはそんなスムーズにいかないのが現実です。もちろん原因は僕なのですけどね。
いや、最初のうちは順調だったんですよ、森田だって。ただ、徐々に僕のプロット(という名の箇条書き)がアップするペースが落ちていき……。
森田「アッシュルートのプロットが完成しました!」
↓
吉村さん「アッシュルートのシナリオを執筆します!」
↓
森田「その隙に、次のハミエルルートのプロットを作成します!」
という完全なる自転車操業になっていき、最終的には吉村さんの作業が森田のプロット作業に追いついてしまうという……おかしい、今回はこんなはずじゃなかったのに!
まぁ、以前はアフレコが始まってから後半のシナリオを書いていた前科もあるので、それに比べれば僕も成長したのかもしれませんが……。
そもそもシナリオを書くよりプロットの方が遅いって、森田、遅筆にも程があります。吉村さんが早いというのもあるけど! それにしても僕が遅すぎました、すみません。
そして森田の個別ルートのプロットが遅れに遅れた結果(遅れたのはプロットだけじゃないですけどね)、プロジェクト全体のスケジュールも押し気味になってしまった為、これ以上は吉村さんに負担をかけられない! という事で最後まで残っていた真相ルートは一旦、森田が下書きを書かせてもらって最後に吉村さんに赤ペン先生(青ペン先生)してもらうという最終手段に打って出ます(こっちの方が逆に吉村さんに負担なのでは? という考えは一旦、棚上げです……)。
正直に言うと、真相ルートは自分の中で一番やりたかった『仲間と一緒に青春を!』というテーマが込められたルートでもあるので、それに関してはある程度セリフを書かない事には伝えられないだろうな……という思いもありました。それに最終的には吉村さんが良い感じに仕上げてくれると信じていましたからね。この時点で森田の吉村さんへの信頼度はカンストしています。
という理由で、真相ルートは他のルートに比べて無駄な会話が多い、少し毛色の異なる内容となってしまったのですが、さすがは吉村さん! 見事に手を入れて仕上げてくださいました。
しかも、森田があちこちで張るだけ張っておいて放置していた伏線とか、そもそも張った事すら忘れていた伏線とかももしっかり回収していただいたり、分かりにくい部分の説明や設定を付け足してくださったりして、果たしてどちらが原作者なのやら……はい。もう、頭が上がりません。
しかも蓋を開けてみれば、森田が下書きを書いたところで結果的にはそんなに時間が節約できなかった(というか余計に時間がかかったかも……)上に、アフレコまでにあまり時間がないという切迫した状況で「すみません! テキストを調整してください!」と、シナリオを書く以上の負担を吉村さんに掛けてしまったりしたのですから、本当に懺悔です。
というか、今回は謝ってばかり!
なんだかこのまま森田の言い訳&吉村さんへのお詫び大会が永遠に続いてしまいそうなので、お待たせしました! ここからは勝手に吉村さんへの質問コーナーをスタートです!
決して、吉村さんの力を借りて文字数を稼ごうとかいう姑息な手段ではありません。
皆さんもいい加減に森田の一人語りに飽きてきた頃でしょうし、純粋に僕が吉村さんに聞きたいことを質問しちゃいます!
それでは、どうぞ!
Q1 デスペラのお仕事の話を最初に聞いた時にどう思いましたか? 企画を見た時の印象は?
吉村氏:
まず、ご依頼のお話を頂いた時、すごく面白そうだなとワクワクしたのを覚えております!
そして乙女ゲームでは、なかなか見ない攻めた設定の人が多かったので、きちんと受け入れて貰えるよう気をつけて執筆しなければとドキドキもしましたし、同時に書き甲斐がありそうだと楽しみにもなりました。
――こちらも色々とドキドキしていました。なんといっても初めてレッドのスタッフやD3Pさん以外の人に企画を見てもらう訳ですからね。もちろん面白いと思って作っていた企画ですけど、他の人が見ても面白いと思ってもらえるのだろうか……? という不安はいつもありますからね。
Q2 デスペラのシナリオを書く際に意識した点はありますか?
吉村氏:
せっかくのクライムサスペンスですので、罪についてはなるべく掘り下げて書きたいなと思っておりました。
ゲームという媒体は、キャラクターたちと一緒になって体験できる所が魅力的だと思っています。なので、犯罪に手を染める恐ろしさや、どうしようもなさを皆さんにも経験して貰えるといいな、そして日常的に暮らす上でも想像力を働かせるきっかけになるといいな、と思いながら執筆させて頂きました。
今作の登場人物たちは、国籍も罪状も違う7人です。
同じ国に育っていても同じ倫理観・価値観の人には、なかなか出会う事が難しいと思います。そんな中で、育ちも考えも違う人が分かり合える事は、本当に奇跡のような事だと思います。なので心を一つに出来る事の稀有さや喜びを体験して貰えるよう、なるべく丁寧に描写するよう心がけました。
そして、これは森田さんが初回の打ち合わせでもおっしゃっていたのですが、長く愛してもらえる作品になるように、という所を意識しました。
世界は目まぐるしく変わりますが、人の在り方はそう大きく変わらないんじゃないかと思います。様々な国、様々な年代の人に、いろんな時代で楽しんでもらえるといいなと思っております。
――さ、さすがです……。森田なんていつも「面白ければいいじゃん」くらいしか考えていないというのに。これがプロフェッショナルとの差なのですね。
Q3 お気に入りのシーンやエピソードはありますか?
吉村氏:
これは難しい……! どのシーンも好きですが、特に気に入っているのはハミエルルートの、桟橋のシーンです。
――確かにお気に入りのシーンを選ぶって難しいですよね(質問しておいてなんですが……)。森田的には全体的に食事しているシーンがお気に入りです! 美味しそう!
Q4 書きやすかったキャラ(ルート)、書くのに苦労したキャラ(ルート)はありますか?
吉村氏:
書きやすかったのは、アッシュルートだったと思います。キャラとして書きやすかったのは、人の良さが滲み出ているカミュだったと思います。
苦労したルートは、主に調べ物の観点でカミュとサリィで、キャラでいうとラミーです。ラミーは「姉ちゃん」と呼んでくれて、主人公にわりと最初からフレンドリーですが、同年代感を出したかったので、いわゆる可愛い年下枠みたいにはならないように、でもメンバーの中では年少組になるようにと、年齢感を出すのが最初のうちは難しかったのを覚えています。
それと、ジブの過去の部分はかなり気をつけないといけないと思っていたので、そこのバランスにも細心の注意を払いました。
――調べ物! そうなのです! ヨーロッパの歴史的な背景とか政治的なこととか、森田のプロットではフワっとしている部分を吉村さんが色々と調べてくださって、提案してくださったのですごい勉強になったのを覚えています(そういう資料を用意するのも、本当は僕の仕事のハズなのですけどね……)。
Q5 ご自身で思わずウルっときちゃったシーンはありますか?
吉村氏:
書いていた時は特になかったんですが、いざプレイしてみると、アッシュルートで、みんなと合流した時はほっとしたし、うるっときましたね。
――僕は歳のせいなのか、ちょっとしたシーンでもウルっときちゃうので、デスペラには100カ所以上の泣きポイントがあるのですけど、みんなと合流した時にウルっと……分かります。乙女ゲームの個別ルートなのに、他のキャラが登場して「安心した」って思えるのって良いですよね。
Q6 ご自身で思わず吹き出しちゃったシーンはありますか?
吉村氏:
アッシュのワニの所です。
――ワニ……なんでワニ? って僕も笑っちゃいました。アッシュの予測不能なボケ(天然)はもはや凶器ですよね。
Q7 シナリオを書いていて楽しかったことや大変だったことはありますか?
吉村氏:
それぞれみんなの出身国について調べる過程でそれぞれの国の料理を作ったり、買ってきたりして擬似旅行を楽しんだり、ヨーロッパの歴史について調べたことが楽しかったです。
大変だった事はあったはずなんですが、喉元すぎるとなんとやらで、今は楽しかったな……という気持ちだけが残ってます。
森田さん、REDのスタッフの皆さんのおかげで最後まで楽しく執筆させて頂きました!
――それぞれの国の料理まで作っていたとは! すごい! 吉村さんのシナリオを読んでいると出てくる料理が食べたくなるのはそういう事だったのですね! 確かに大変だったことは喉元すぎると……というのは分かります。僕なんていつも途中で「もう二度とゲームなんて作るもんか!」ってなるけど、終わるとそんなこと忘れますからね。
Q8 完成したゲームをプレイしたご感想を!
吉村氏:
楽しかったです!
こんなにたくさん背景を使って大丈夫かな……と執筆中は心配していたのですが、こだわりを持って作って頂けていて感動いたしました。追われている状況ではありますが、まさに旅気分を味わえるゲームになっているのではないかと思います。
あとミッションパートがすごいですね! 前述の通り、最初は仕様が未定だったのでとりあえず一本道で書いていたんですが、その後森田さんとのラリーでなんとなく形になっていきつつ、最終的にどうなるのか楽しみにしていたんですが、いざプレイしたら演出が細かくて感動しました! ぜひ森田さんこだわりのミッションパートを、色んな人にも楽しんで貰いたいですね。
――ミッションパートについては本当にご迷惑おかけしました(他にもいっぱい迷惑かけていますけど……)。仕様がふわっとした中で書いてもらって、さらには仕様が決まった後に調整をしていただいて……あのミッションパートが完成したのは吉村さんがいてくれたからです!
Q9 ちなみに、最初にプレイするとしたらどのルートがオススメですか?
吉村氏:
ここは悩みどころなんですが、個人的にはハミエルかジブあたりが最初にオススメかな? と思ったりします。でもどのルートからプレイして頂いても大丈夫だと思います。
――おお、意外と渋いルートのチョイスですね。ハミエルは僕も個人的に好きなルートなんですけどね(ハミエルのような男に憧れる森田としては)。ちなみに誰も興味ないと思いますけど森田が最初におススメするのは「アッシュルート」です。なんか一番真面目に逃亡劇をやっている気がするので……でもどのルートからでも楽しめるのがデスペラの良いところですよね。
Q10 共通ルートの見どころは? ここを見てほしい「こだわりポイント」は?
吉村氏:
最初はバラバラな方向を向いていた7人が少しずつ仲間になっていく所です。森田さんも打ち合わせの時に「七人が仲間になっていく所を大切に描きたい」とお話ししていたので、特に実体験として楽しんで頂けるよう丁寧に描写する事を心がけました。
おかげで、いざプレイしてみたら仲良くなれていない頃の序盤のハミエルがすごい冷たくて驚いたのを覚えてます……笑
――序盤のハミエルはかなり尖ってますからね……あれでもずいぶんとマイルドに調整してもらったというのに。でも、序盤の全体的にギスギスした空気感が僕は好きなんですよね。アレがあるからこそ仲間になっていく過程が感じられますから。
Q11 アッシュルートの見どころは? ここを見てほしい「こだわりポイント」は?
吉村氏:
悪意のない人たちが理不尽に追われる羽目になったら、どれぐらい大変か分かるところが、見どころかなと思います。
そして、環境が犯罪者を作るのだというやるせなさ、誰でもこうなるかもしれないという恐ろしさを実感して頂けると嬉しいです。
――深い……。確かにアッシュルートが一番、過酷な逃亡生活をしていると思いますからね。アッシュの育った環境については森田の設定を、あのようにシナリオとして昇華させてくるのか……! とゾクリとなりました。
Q12 ハミエルルートの見どころは? ここを見てほしい「こだわりポイント」は?
吉村氏:
本心を隠す詐欺師と、心を見る主人公という二人の対比です。
心を隠しすぎて他人との境界を引きすぎていた人が、他者の存在に気づく時にどんな揺り返しが来るのか。自己と他者の交わりによって訪れる変化が見どころです。
――実は企画を作った当初は、主人公の『心を見る力』とハミエルの『詐欺師』という設定がここまで意味のある関係だって考えてなかったんですよね……ちょっと考えたら分かる事なのに、プロットを作っている時に「もしかしてこの二人の関係って……」と自分で大発見した気持ちになったのは内緒です。
Q13 ジブルートの見どころは? ここを見てほしい「こだわりポイント」は?
吉村氏:
取り返しのつかない罪との向き合い方です。
誰にでも、「あの時こうしていれば」と後悔する事はあると思います。
長い時間かけても癒えない傷や、清算できない罪があった時、どうすればいいのか。自分が許せるのか、自分とは関係ない他人の罪であってもその罪を許容出来るのか等を考えるきっかけになると嬉しいです。
――これも深い……。確かにジブの罪と向き合う場面は重いですからね。僕は男目線で見た時にジブの強さだけでなく、弱さやダメな部分も感じられるのが好きなんですよね。あとジブルートは『あの敵』も気に入っています!
Q14 ラミールートの見どころは? ここを見てほしい「こだわりポイント」は?
吉村氏:
7人の中では、一番世界で多いタイプの犯罪をしている人ではないかと思っています。
海外旅行へ行ったら一度は遭遇するかもしれない「窃盗(スリ)」ですが、その犯罪に手を染めるきっかけってなんだろう? と、想像するきっかけに彼の存在があったらいいなと思っています。もちろん罪なので許しちゃいけないんですが、それについて「本当に?」と思考する事が、クライムサスペンスの醍醐味ではないかなと思っています。
――確かに僕も海外で一緒にいた人がスリ被害に遭って大変だったのを思い出しました……デスペラは登場人物が犯罪者なのですが「決して犯罪を美化しない」というのは意識しましたからね。犯罪が悪であることを示しつつ、犯罪者になった経緯には同情の余地があって感情移入もでき、それでも罪を犯すことを正当化しない……って、結構な無茶振りをしていたんですね。
Q15 カミュルートの見どころは? ここを見てほしい「こだわりポイント」は?
吉村氏:
カミュという人が抱える自己矛盾に向き合う所です。
古典でもよく描かれるテーマが彼のルート内にはあるわけですが、そこが彼のキャラ造形とマッチしているところも見どころかなと思います。
一対一なら対話で分かり合えたかもしれない事も、人数が多くなればなるほど難しくなるかもしれない……というところを注目して見てもらいたいです。
――カミュルートは次々に予想外の展開に巻き込まれていく構成になっていて、僕的にはこれはもうコメディじゃないだろうか……とプロットを書きながら思っていたのですが、流石は吉村さん。面白カッコよく仕上げてくれました! 湖のシーンとかすごく印象的なんですよね。
Q16 サリィルートの見どころは? ここを見てほしい「こだわりポイント」は?
吉村氏:
サリィルートは、様々な所にある『境界』が見どころかなと思います。
ほんの少しの差が人生を変えるんだろうな、という所ですね。ぽんと誰かに背中を押されたら、あっち側に行きそうな危うさと、引き止める人がいる事の大きさです。
――サリィの魅力はいっぱいあるんですが、主人公と喧嘩するシーンが凄いお気に入りで、アフレコ中にひとりでめっちゃ泣いていましたからね。あとでサリィ役の伊藤かな恵さんも、あのシーンは涙が出たとおっしゃっていたので「分かる」と思いました。
Q17 真相ルートの見どころは? ここを見てほしい「こだわりポイント」は?
吉村氏:
各ルートを経て、いよいよ全員大集合!
7人が揃っていることへの安心感がそろそろ芽生えているかな? と思います。
こんな事でも無ければ集まらなかったような7人が、一緒にいることの奇跡を噛み締めつつ、彼らとの絆を信じて、ひたすら突き進んで欲しいです!
――7人が一緒にいる奇跡は本当にそうですよね。実は、真相ルートは僕的には一番作りたかったルートだったのですが、果たしてこれが求められているのだろうか? という不安は最後(発売後)までありましたからね。「アッシュが好き」とか「ハミエルが好き」とかキャラを好きになってもらえるのは嬉しいのですけど、「7人が好き」って言ってもらえるのが一番うれしいですからね。
Q18 アッシュと主人公が喧嘩するとしたらどんな事が原因になると思いますか?
吉村氏:
アッシュが靴下を丸めて洗濯物に出しちゃった時(3度目)とかには、ついに喧嘩が起きるのではないかと思います。
――丸めた靴下……それも3度目!? そこまで生活感のある回答が来るのは予想外でしたが、なんかすごく分かります! 僕もよく怒られますので、この場合はアッシュが悪いです。
Q19 ハミエルに日本の料理を食べさせるとしたら何を食べさせてみたいですか?
吉村氏:
湯葉とか反応が気になりますね。
――あとは納豆ですかね? 先日、会社の近所のスーパーで海外の方が買い物カゴ2つにいっぱいの納豆(推定50個程)を買っていたので、最近は海外の方にも人気なのかもしれませんが……。
Q20 ジブは「パパさん」と呼ばれていますが、本当のパパになるとしたらどんな父親になると思いますか?
吉村氏:
凄い子煩悩になると思います!
写真をプリントアウトして常に携帯していると思うんですが、そうすると死亡フラグが立ちそうなのが悩みどころです。
――ああ……職場のロッカーに子供の写真とか貼っていたら死亡フラグですね。そしてジブならやってしまいそうです。
Q21 ラミーは猫っぽいですが、他のメンバーを動物で例えると?
吉村氏:
アッシュ → 狼
ハミエル → 狐
ジブ → バイソン
カミュ → イランド
サリィ → レッサーパンダ
ミカ → 白い鳩
――イランド……? 恥ずかしながらあまりなじみが無かったので、ネットで画像検索したらそこにカミュがいました! アッシュの狼とハミエルの狐という対比も良いですね。個人的にはサリィのレッサーパンダがツボです。なんかもうレッサーパンダがサリィにしか見えない……。
Q22 カミュが興奮した時に何を言っているか分からなくなる「gないけhぐえn」みたいなセリフってどうやって入力しているのですか?
吉村氏:
目を瞑ってランダムでタイピングしています。
――やっぱりそうなんですね! 僕もキーボードを見ないでガチャガチャやりますが、あれって結構、難しいんですよね。意外と全部ひらがなになっちゃったりしてやり直したりしています。
Q23 サリィが日本に遊びに来たらどこに連れて行ってあげたいですか?
吉村氏:
原宿でショッピングもいいですし、サリィが好きそうなコンセプトのアフタヌーンティービュッフェとかもたくさんあるので連れて行ってあげたいですね。
――やっぱり原宿や渋谷は外せないですよね……さすがに森田には厳しい街なので、サリィが日本に来た際には吉村さんにアテンドをお願いします! 上野や浅草ならお任せください。
Q24 他にも逃亡で行かせたかった国や街はありますか?
吉村氏:
アマルフィやモンサンミッシェルなどでのんびりしたり、ルーブル美術館やカタコンブ、オペラ座やロンドン塔などなど有名どころでミッションがあったら楽しそうだなとも思いました。
――モンサンミッシェルは良いですねー。森田もかなり好きな場所です。確かにフランスはもうちょっと登場させたかったかも。それにルーブル美術館やオペラ座などでミッションは楽しそうですが……背景が大変そう!(作れと言われれば作ります!)
Q25 シナリオを書く時の環境ってどんな感じなのですか?
吉村氏:
執筆に使っているツールはScrivenerです。執筆データを書き出したら、アドベンチャー用のゲームエンジンで簡易的なゲーム形式にして内容をチェックしたあとに、Just Right!Proで校正して提出しています。書き始めの時は音楽を流しますが、集中してきたら無音にしています。
今作では洋楽とBBCワールドニュースが執筆のお供でした。
――『Scrivener』って打ち合わせの時に吉村さんが使っているのを見せてもらって、ずっと憧れていたんですよね……アレを手に入れたら僕も吉村さんみたいにシナリオが上手になるかも! と思ったりして。あと、ゲーム形式にしてチェックっていうのは普通にスゴイです! 僕は周囲の音が気になっちゃうので、シナリオ作業の時は歌詞の意味が分からない洋楽やインスト系の曲からゲームの雰囲気に合う曲を集めた自前のサントラですね。BBCワールドニュースを見るには、まずテレビを買うところから始める必要があるので、森田には難易度は高いかも……。
Q26 突然ですが大喜利です! 「デスペラ」であいうえお作文をどうぞ!
吉村氏:
!?
で っちあげの罪が
ス ペインの
ペ テン師や
ラ イフルを使うスナイパーと
ど ろぼうだけれど大怪盗と名乗る人と
ロ マンを抱く爆弾魔と
っ しか最初は言わない無口な傷害罪の青年と
プ リティなハッカーと
す てきな出会いをくれました!
――!? まさかこの無茶振りに本当に答えてくれるとは! しかも「デスペラ」だけじゃなくて「ドロップス」まで!? そしてクオリティが高すぎて、むしろこれを公式にしたいです! なんの公式なのかは謎ですが……。そして「っ」の処理の仕方が見事すぎる。
Q27 どうしたらシナリオが上手に書けますか?
吉村氏:
私もまだまだ勉強中なので、どうすれば上手に書けるのか常に模索中ですが……あえて言語化するとなると、媒体ジャンルに問わず、良作と呼ばれるものも駄作と呼ばれるものも手に取る事、同時に世間の評価に惑わされずに摂取する作品を選び、自分だけの感想を抱く事、どんな作品であれ、どのような意図で作られたのかを想像する事、伝えたかったものが何かを探す事、そうした事を繰り返し己を研ぎ澄ませ鍛錬し続ける……とかでしょうか。私も、引き続き精進していきたいと思っています。
――おお……めっちゃ、勉強になる。なんかこの部分だけテキストが光って見えるレベルです。そもそも、こんなこと恐れ多くて普通は聞けないですからね(聞いたけど)。そしてこの姿勢こそが吉村さんの書くシナリオの魅力なのでしょうね。なんというか、作り手としての器が違いすぎて、森田の小物感が半端ないっす!
Q28 やり残した事や、もっとこんな事をしたかった! というのはありますか?
吉村氏:
個人的な考えではあるんですが、物語にはそれぞれ適切な形というのがあると思っていて、今作においては、この形を持って幕引きというのが一番美しいかなと思っております。なので、やり残した事はないつもりです。
でも彼らの人生はまだまだ続きますから、もちろん書きたいお話はたくさんあります。これからも書く機会に恵まれると嬉しいですね。
――ほらね。森田みたいに「あれもやり残したー! これもしたかったー!」とか言っている人間とは根本的に意識が違うのです。でも吉村さんに「やり残したことはない」って言ってもらえるのって、実はすごい事なんじゃないでしょうか? そんな風に言ってもらえるのは普通に誇らしいですからね。
Q29 最後に、森田に一言!
吉村氏:
『デスペラドロップス』という作品で、シナリオという部分で携わる事が出来てとても嬉しかったです。
まさに、森田さんがお話されている通り、交換日記というべきか、二人三脚というべきか、剛速球のラリー状態で執筆パートが進んだと思いますが、とても楽しかったです。森田さんとご一緒出来て、とても光栄でした!
――もったいないお言葉で泣いた。『剛速球のラリー』と言ってくれていますけれど、吉村さんの打ってくる球が凄すぎて、森田がちゃんと打ち返せていたのかは謎ですし、『二人三脚』というより『おんぶ競争(森田が背中に乗ってる)』だった気もしますが、本当に楽しかったですよね。こちらこそ光栄です!
そして、お忙しい中こんな茶番に付き合っていただき、本当にありがとうございました! そもそも、あの吉村さんにこんな無茶振りするヤツもそうそういないと思いますが、まさか本当に答えていただけるとは、森田が一番ビックリしています。
途中から質問にもなっていないし……大喜利になっているし……完全に個人的な興味の質問だし……。
って、最後の質問が『森田に一言』っていうのはあまりに酷いので……。
Q30 本当の最後に、ユーザーのみなさんにメッセージをお願いします!
吉村氏:
『デスペラドロップス』という作品を手にとってくださり、本当にありがとうございます!
娯楽がたくさんある現代社会において、本作を選んで頂けたことが何よりも光栄だと思っております。その上で、本作を楽しんで頂けていたら、私もとても嬉しいです。
そしてかなり長くいろいろとお話させて頂いてしまいましたが、ここまで読んで下さりありがとうございました。森田さんも初回ブログでおっしゃっておりましたが……作品を受け取る時の邪魔になりたくないな、と思って普段作品についての言及はなるべく控えているのですが、こうして質問していただく事で執筆時を振り返る事が出来て楽しかったです。私はシナリオライターとして彼らが動き出すお手伝いをしたかもしれませんが、7人は確かにどこかで生きていて、のんびりマイペースに人生を歩んでいると思っています。
彼らの物語をまた、お届け出来る事を切に願っております。
これからも『デスペラドロップス』を、どうぞよろしくお願いいたします!
――もう今回はここで終了していいですよね。これ以上、森田が何かを語るという事こそが蛇足という物です。
吉村さん、本当にありがとうございました!
今回のブログは僕も『読み手』として楽しんでしまいましたが、皆さんにも楽しんでいただけたのでは思っています。
それでは、またお会いしましょう!(次はまた森田のソロなのでガッカリしないでください)
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