D3Pオトメ部
2024.03.19 Tue 16:45
『DesperaDrops/デスペラドロップス』制作秘話 第二回「人物」
※本記事は Nintendo Switch『DesperaDrops/デスペラドロップス』のネタバレを含みます。未プレイの方はご注意ください。
※制作秘話含むデスペラ関連記事はこちら
こんにちは。デスペラドロップスのディレクター森田です。
需要があるのか不明ですが、要らないとも言われてないので二度目の登場となります。
勝手にデスペラの開発を振り返るこのコーナー、前回は企画立ち上げ時のことをつらつらと語らせてもらいましたが、今回からが本番です。
ちなみに、デスペラの様なノベルゲームを開発するざっくりとした流れは以下の通りです。
- 企画(コンセプト)作り
- キャラクター設定作り
- シナリオ構成・プロット作成
- キャラクターデザイン/シナリオ発注
- グラフィック発注・作成(立ち絵や背景やイベントスチルなど)
- ゲーム部分作成(仕様、UI、プログラムなど)
- サウンド作成、音声収録
- スクリプト(立ち絵や背景や音楽を指定してノベルパートを作成)
- その他調整、デバッグ等
もちろん実際は色々なパートが同時並行で進行していくので、上記の流れはあくまでイメージですが、何は無くともキャラクターとシナリオの構成が決まらない事には始まりません。
ということで、めでたくプロジェクトがスタートしたら本格的なキャラづくり、シナリオ作りという作業がスタートします。
ノベルゲームの場合、よほど特殊なゲーム性でも無い限り、まずはキャラクターの設定やシナリオのプロットを作ります。
キャラクターの設定が無いと、イラストレーターさんにキャラクターデザインを発注できないですし、シナリオの構成やプロットといった資料がないと、シナリオライターさんにシナリオを発注できませんからね。
本格的にスタートと言っても、まだ準備段階なので僕以外にはまだスタッフがいないひとりぼっち期間がしばらく続きます。寂しくは無いですが割と孤独です。
この準備段階から複数人でチームを作って作成するパターンもあるかもしれませんが(それが普通かもしれない)、僕の場合はだいたい個人プレイとなります。その理由としては「こんな面白い作業を他人に取られてなるものか!」という思いが無いと言えば嘘になりますが、それよりも根幹の部分を複数人で考えると、どうしてもみんなが納得するような『平均点のなんとなく良い感じ』に着地してしまうという危険性があるかな、と考えているからです。実際にはそんな事ないのかもしれないですが、まぁ、結局は作り手のワガママってやつですね。
どうせそのうちワガママなんて言えなくなるので最初くらいは許してください。
とは言っても、設定やプロットを作ったらレッドのスタッフやD3Pさんに確認してもらって意見を貰う訳ですから、それを突っぱねる程のワガママじゃありません。
むしろ、他人の意見大事です。特に今回は僕にとっての乙女ゲーム初挑戦なので尚更です。
ということでまずはレッドのスタッフに、コザキユースケさんと吉村りりかさんにコンタクトを取ってもらいます(いきなり人任せ……)。実はこのお二人にお願いすることは企画書を作っていた段階から勝手に決めていましたが、本当に勝手に決めていただけでお話なんてしていませんから参加してもらえる保証はありません。
こればかりは企画を気に入ってもらえるかどうかだけでなく、スケジュールや条件、その他モロモロの要因があるので無理な場合はどうあがいても無理なのですが、奇跡的にお二人とも了諾いただけまして、もう僕の仕事は終わったのも同然です(そもそも何もしてないけど)。
キャラクターの設定とシナリオの構成はほぼ並行して作成するので、どっちが先っていうのもないのですが、どちらかというとキャラ設定が先になります。流石にどんなキャラが登場するのかが白紙では、お話も作れないですからね。
というわけで、やっと今回のお題である『人物』つまりは『キャラクター』です。まずはキャラクターをデザインしてもらうためにも必要な設定作りの始まりです。
ちなみに企画書のキャラクター紹介ページでは、まだキャラの名前や大まかな方向性くらいしか決めていません。というのも、キャラの設定やストーリーって実際に作り始めたら色々と変わっていきますからね。 例えば、アッシュくんの場合だと……
アッシュ・マイヤー
年齢:24歳
出身地:バーデン(スイス)
罪状:傷害事件(再犯)
懲役:2年6ヵ月
幼い頃から喧嘩や暴力事件を起こし続け故郷を追い出された。自分以外は誰も信じようとしない一匹狼で、女性が苦手。
――と、書いてあるだけです。
年齢とか細かいニュアンスは微妙に違いますが、この時点で概ねアッシュくんっぽくはあります。女性が苦手っていうのは最終的にカミュくんが担当してくれることになりますけど。そもそもアッシュの場合は女性に限らず人間関係が苦手ですからね……。
あと『熱血の一匹狼』という謎のキャッチフレーズが痛々しいですね。たぶん企画段階では割と喧嘩っ早い、熱い男という役割を想定していたのだと思われますが記憶は忘却の彼方です。まぁ、内面的には熱いところもあるので間違いじゃないですけど、ね。
ちなみに他のキャラも、この程度の基本的な方向性だけは企画書の段階で決まっていています。これは7人で一つのチームという性質上、キャラのバランスをとる為です。僕は大抵、主人公を入れて7人組を描くのですが、主人公を除く6人の役割として僕がいつも無意識に意識するのが……
- 話を進行するまともな人
⇒ こういう人がいないとシナリオが進行しなくなるので重要。 - 場を和ませる明るい人
⇒ いわゆるムードメーカー的役割ですね。だいたいギャグも担当。 - 主人公に否定的で突っかかってくる人
⇒ 特に序盤での障害となる人物ですね。ツンデレ要員でもあります。 - 甘えてくる人(主人公より歳下)
⇒ 自分を慕ってくる弟や妹のポジションのキャラがいると癒されます。 - 甘えさせてくれる頼れる人(主人公より歳上)
⇒ これは実生活においても重要です。甘えたい。 - 自分と近い立ち位置で対等な人(主人公と同世代)
⇒ 最初に主人公を引っ張ってくれる役回り。幼馴染とかの枠です。
……というキャラ配置です。もちろんいつもこの通りではユーザーさんに飽きられちゃうので、色々と変化はさせますが、ある程度デコボコした集団を描こうとなると、こういう要素は誰かが担当することになるハズなのです。
さて、これが今回のデスペラのメンバーに当てはまるのか? そういえば今回はチェックしてなかったので、順番が逆ですが今さらながら確認してみると……
- 話を進行するまともな人
⇒ 間違いなく『ジブさん』ですよね。ホント助かりました。 - 場を和ませる明るい人
⇒ やっぱり『ラミーくん』でしょう。 - 主人公に否定的で突っかかってくる人
⇒ どう考えても『ハミエル』一択。 - 甘えてくる人
⇒ まぁ『サリィ』ですよね。 - 甘えさせてくれる頼れる人
⇒ ある意味で一番普通な『カミュくん』。安心感ありです。 - 自分と近い立ち位置で対等な人
⇒ 最初から同室に寝泊まりする『サリィ』。
……あれ? サリィが2回でアッシュどこ行った……と思ったけど、よく考えたら『4. 甘えてくる人』、これがアッシュのポジションじゃないか! と妙に納得。
序盤のクールで一匹狼なスタイルから一転、あの尻尾の振りようで割とチョロいとスタッフにも評判のアッシュくんは、なかなかの甘えたがりではないかと! まぁ、デスペラのキャラはアッシュに限らず基本的に皆そろって甘えん坊なのですけどね……。
そして、これは絶対に僕が男であることに起因している気がします。男って基本的にダメダメなんですよね。(※森田の個人的な意見です)もう本当にダメ。隙あらば女性(別に女性じゃなくても他人に)に甘えたい! そういう生き物です。(※森田の個人的な意見です!)
それが自分で分かっているから、どうしても男に幻想を描けないという。乙女ゲーム的なカッコいいキャラ達を楽しみにしていたユーザーさんには本当に申し訳ないのですが、このヘタレっぷり満載の男達が僕の表現できる、ある意味でリアルな男達なのでご容赦ください。
さて。改めて企画書を見返すと、珍しい事に7人のキャラクターの名前は企画書の時点から変わっていませんでした。初志貫徹なのは良い事です。
ある程度の段階まで開発が進んでから、何らかの事情でキャラの名前を変更せざるを得ない場合も時々あるのですが、できればそれは避けたいところです。
だって途中で名前を変更した場合、新しい名前に切り替えるのって想像している以上に大変なのですよ。その時点でそれなりに思い入れは出来ちゃっていますし、それなら似たような雰囲気で別の名前に……と考えたりするともうパニックです。
何はともあれ今回は変わらなくて良かった!
ちなみに僕の名づけの手法として、何らかの法則(まとまり感)を取り入れるというのは割と好みです。これは他のコンテンツでも良く使われる手法ですね。全員の名前に『色』が入っているとか、『花の名前』で統一するとか、まぁ、そういうやつです。
これって下手に使用すると一気にチープな世界観になってしまうので(僕は好きですが)諸刃の剣ではありますが、デスペラの7人の名前にも一応の法則性を持たせています。
……が、色々とこねくり回しているうちに原型を見失っていたり、さほど統一感が無かったりもするので、この部分に関してはご想像にお任せしましょう。
それと名前を付ける時のどうでもいいポイントですが、せめてメインキャラの名前は英語表記した時に『頭文字』が被らないようにするっていうのは意識します。アッシュならA、ハミエルならHってことですね。 これは文字にした時の見た目の差別化といった理由もありますが、ゲームの開発では画像のキャラ差分や、イベント分岐のフラグ管理などで『CG_01_a』とか『CG_01_h』みたいにキャラ名を省略した記号を使用することが多々あるので、どうせならバラバラの方が便利かな……という程度の理由なのですけどね。
まぁ、それよりもなによりも一番重要なのは名前を音にした時の響き――『語感』です。つまり『見た目』と『性格』と『名前の語感』が一致している(と思える)かどうか。これにつきます。
アッシュという響きはなんか鋭そう。カミュという響きはなんか知的。みたいなイメージですね。こればっかりは僕の主観になってしまうのですが、経験上、あまりズレてないんじゃないかなぁと思っていますが……どうでしょう?
さて、キャラの名前や方向性は決まっているとはいえ、裏を返せば名前と方向性しか決まっていない状態なので、これを膨らましてキャラの設定を作っていくことになります。
まずは主人公を含めたメインキャラ7人ですね。コザキさんにキャラクターデザインをしてもらう都合上、最優先で作業をスタートです(まぁ、そうじゃなくても普通にメインキャラから設定は詰めていくのですけど……)。
で、キャラの設定っていうのは大きく分けると『内面的な設定』と『外見的な設定』に分かれています。
内面的な設定というのは、いわゆるキャラクターの性格とかですね。
要するに『一匹狼気質』とか『皮肉屋』とか、そういう個性的な部分です。この設定を作る際の僕の手法は、そのキャラクターがどうして今のような性格になったのか? という生い立ち部分をとにかく考えることです(他の作り手の方もたぶんそんな感じだと思うけど)。
例えばアッシュの場合だと、どういう家庭に生まれて、どんな子供時代を過ごしてきて、どんな事があって犯罪者となり、そして今のあの他人を寄せ付けない一匹狼気質なアッシュになったのか? その人生を作り込むわけです。
特に今回は全員が犯罪者なので『どうして犯罪者になったのか?』というきっかけ部分は(当然ですが)重要になります。流石に『ムシャクシャして喧嘩ばかりしていた』とか『三度の飯より人を殴るのが好き』みたいな雑な設定にするわけにはいかないですからね。
そして、それぞれが犯罪者になった理由や過去を考えていた時に思ったのは、人が罪を犯すのには、それなりの理由があるのだなぁ……という事です。
まぁ当たり前ですけど、6人とも生まれた時から犯罪者だった訳じゃないですからね。それぞれが、やむにやまれぬ事情があって犯罪者になってしまったという……そんな訳で、どうしても『悪党』と言いつつも枕詞に『憎めない』と付いてしまうようなキャラクター達になってしまったのはご愛嬌です。
そもそも僕って悪人を設定するのが苦手なのですよね。例えそれが敵役であったとしても、どうしてもどこかに救いを用意してしまう。そんな甘々な男なので。
そしてキャラクターの生い立ちと同時にどんな外見なのかもざっくりと考えます。
身長や体型、髪型や髪色、どんな服を着ているのか、といった見た目の特徴ですね。キャラクターをデザインしてもらう際のガイドラインになります。
そして、この時に重要なのはあくまで『ざっくり』です。
これは僕のやり方なので人それぞれだと思いますが、基本的にはイラストレーターさんの持ち味を生かしたいので、あまり細かい注文はしないようにしています。
アッシュの場合だと、『銀髪』『無造作なショートヘア』『黒いレザーコート』『細マッチョ』『俺に関わるなオーラ全開』『むき出しの鋭いナイフの様な雰囲気』みたいな抽象的なメモ程度です。参考資料となるような画像とかも求められない限りは用意しません。そういう絵的な資料って、デザイナーさんがデザインする方向性の幅を狭めてしまうので逆効果ですからね。
あと、仮に僕の書いた外見のメモと違っていても、絵を見た瞬間に「あ、コレだ!」と思ったら、デザイナーさんのデザインを優先します。
なぜならその作家性も含めてお願いしている訳ですから。
例えばアッシュの場合、設定を作っていた時はもう少し中二っぽい服装かなとイメージしていたのですけど、コザキさんに「バイク乗りならヒラヒラしてない服の方がいいですよね」とあの衣装を提案されて、見た瞬間「あ、これアッシュですね!」となりましたから。 でもその時に「あと、この服の方がバーテンダーっぽいでしょ?」と言われて「バーテンダー……?」と思わず『?』となった僕でした。
確かに各地を転々としながらその場限りの仕事で生活しているという設定は書いたけれど、バーテンダーのバイトなんて書いたっけ? むしろ過去の経緯から酒が嫌いという設定なのだけど……と思っていたら、どうやら出身地の『バーデン』を『バーテン』と読み間違えていたらしく……なんていうか、結果オーライなミラクルが起こってアッシュくんは誕生しました。
過去の経験上、こちらがある程度ちゃんと内面的な設定を作っていれば、イメージから大きく外れたキャラクターデザインが上がってくるってことは稀です。なんと言っても相手はプロですからね。そこに関しては100%信頼しています。
なので、今回も一番最初に7人の大ラフ(上のイラスト)をもらった時点で、すでに今のキャラクターの造形は完成していました。すごくないですか?
本当に細かい部分や、キャラのイメージに合わせて色味の調整をしてもらったくらいですからね。いやぁ、プロってすごい!
ということで、ここからはキャラの『初期設定』などを交えてコザキさんの『設定画』をご紹介しようと思います。
【注意】ここから先は内容の性質上、今まで以上にネタバレな内容に突入しますので、未プレイの方は画像だけ見て、僕の文章は読み飛ばすことをお勧めします。
(未プレイの方がここまで読んでくれているとは思えませんが……うっかりネタバレ読んじゃったよ、森田許さねぇ! ってならない様にご注意ください)
◆アッシュ・マイヤーについて
アッシュに関しては誤解を恐れずにあえて言わせてもらうと、いわゆる『正統派ヒーロー』というセンターポジション的存在です。乙女ゲーにしろ、ギャルゲーにしろ、複数のキャラクターの中からお気に入りを見つけてもらうという性質上、6人のキャラの扱いはあくまで横並びなのが前提なのですが、とはいえ集合イラストを描く時、キャラクター紹介をする時、その他もろもろの場合でキャラクターにはどうしても並び順という優先度の様な物が必要になります。
その場合の一番手、あるいは中央に立つというポジションを担っているのがアッシュというわけです。実際、このキャラ紹介もアッシュからですし、パッケージイラストもアッシュが手前にいますからね。まぁ、出席番号順みたいなものだと思っていただいて構いませんけど。
という訳で、正統派ヒーローとしての宿命を背負ったアッシュなので、ストレートにカッコいい必要があります。クールで、孤高で、無口で、他人を寄せ付けないが、かといって心の内には熱い想いが燃えている……そんなナイスガイなのですが、何故かここぞという場面で誰よりもボケてくれる愛すべきキャラに育ってくれました。
もっともボケてる部分はだいたい僕が加筆してしまった結果なのですが(今回は下らないギャグとか不要ですと言われていたのに我慢できませんでした)、でも、なんかそういう隙があった方がカッコいい部分が際立つかなぁ……というか、たぶんただ純粋にカッコいいだけのキャラって僕には作れないのかもしれない。恥ずかしがり屋さんなので。
以下、初期の設定資料に書かれていたネタです。
怒り以外の感情を表すこともほとんどなく(序盤は笑わない)、自分から会話することもない。お調子者のラミーからは「黒すぎてそこにいるのが見えなかった!」と言われるレベル。基本的にネガティブで、根暗な印象。
……だそうです。最終的にはそこまで根暗やネガティブキャラではなくなったと思いますが、ラミーの言い方が容赦ないですね。割とすぐに「アッシュの兄貴」と慕ってくれましたけど、確かに護送車のシーンでは「ネクライダー」ってあだ名付けられていましたからね。
でも、序盤のアッシュは本当に喋らないので護送車のシーンでもしばらく「…………」ばかりで、アフレコ時に早く喋って! ってハラハラしたのもいい思い出です。
序盤は笑わないといいつつ、バイク見つけた瞬間はニコニコですけどね。
で、ついでにもうひとネタ。
血を見るのが嫌いなので武器(銃や刃物)を使うことは好まない。
過去の出来事から血を見るのが嫌い(血を見ると我を忘れる)であるが故に刃物も嫌いとなっており、その結果、あるルートではフォークを武器に人質を取るというシュールな展開になったりしています。それにしてもあのフォーク、どこで手に入れたのだろう? たぶんガレリアのレストランかどこかから拝借したのでしょうね。
あと、アッシュと言えば読書家です。実はああ見えて元々は優等生だったのです(シナリオではあまり語ってないですが)。もっとも、家庭内での事件があるまでは……ですが。
それまでは性格的に内向的ではあったものの、どちらかといえば真面目な学生で、9年間の義務教育終了後は高校へ進学する進学教育コースへと進む予定になっていた(母親のせめて息子にはきちんとした教育を受けさせたいという気持ちに応えようとしていた)。 だが、事件後は当然のように学校からもドロップアウト。クズの息子は結局クズだと、自分自身を否定するようになってしまう。
この辺りはスイスの教育制度についても色々と調べたのですが、あまり語る機会がありませんでした。その結果として残ったのが、趣味が『読書』ってことなのですけど……。
唯一の趣味は読書だが、内容を楽しむのではなく、ただ時間を潰すために読んでいるので、哲学書でも聖書でも大衆文学でも内容はなんでも構わないし、覚えていない。
と思ったら、意外とただの暇つぶしだったりしていますが、それでも何かと博識な面を見せてくれるので、基本は真面目なのですよねぇ。
まぁ、後半になるほどボケに磨きがかかってくるのですが、アッシュ的には全部大真面目ですからね。頼もしい兄貴です。
◆ハミエル・ルイスについて
ハミエルについては『男から見てもカッコいいキャラ』というコンセプトで作っています。
普段は飄々とした雰囲気で軽口を叩き、どこまで真剣なのか分からないし、決して本気を見せない。協調性も無く皮肉屋で、自由気ままに我が道を行く男。それなのにやる時はやってくれるし、決めるべき時はしっかりと決めてくれる。そして詐欺師で色男。
もう、男の憧れとロマンが詰まったような人物。それがハミエルなのです。
……まぁ、完全に僕の趣味主観ですけどね。あと別に詐欺師に憧れている訳じゃありませんが。
なんにしても、男として生まれたからにはこういう風に生きてみたいな、という理想をモリモリに詰め込んでおります。普段はまるでやる気を見せないのに、本気を出したらスゴイっていうのは森田的に鉄板なのです。水戸黄門的なお約束です。
そんな男のロマンの代弁者であるハミエルですが、実は企画当初はどちらかと言うとチャラくて、いかにも色男系キャラを想定していたんです。アッシュが一匹狼系でクールですからバランスをとる為として、序盤から主人公を口説いてくるような一見すると遊び人風のナンパな奴でした。
なんせ企画書に「チャラすぎる詐欺師」というキャッチコピーがつけられていたくらいですからね。しかもサンプルで書いてあるセリフが「俺に騙されるってのは女としては最高の幸せなんだぜ、分かるだろ?」ですからね。もうハミエルの恥ずかしい黒歴史です。実際には僕の黒歴史なのですけど……。
そんなチャラ男になりかけていたハミエルがどうして今の彼になったかというと……6人の犯罪者の中に、最低一人は主人公に対して否定的な感情を抱いているキャラを入れたかったからかもしれません。犯罪者の中に紛れ込んでしまった普通の女の子を、全員がウェルカムで受け入れるというのはあまりにリアリティが無いですし、一人くらいは受け入れようとしない人物がいた方が緊張感も出ますからね。
とはいえ明らかにリーダー的なまとめ役のジブや、ムードメーカーとなるラミー、一緒に行動することの多いサリィが敵意剥き出しだと逃亡生活がマジでツラすぎますし、アッシュはそもそも他人に関心が無いし、カミュはアレですし……。
という事で、プロローグの回想シーンでは人当り良くナンパしてきたはずのハミエルが序盤は主人公を嫌っているという展開は面白いかもしれないな、と思いました。
そしてどうして主人公を嫌うのか? という部分を突き詰めた結果として、主人公が日本人だからという、例の逆恨みともいえる理由が生まれたわけなのです。
幼い頃に母親が自分と父親を捨てて日本へと戻ってしまった為、日本人(特に女性)を憎んでいる。実際には母親は日本に戻るつもりなど無かったが、良家の娘だった為に父親に無理やり連れ戻され、スペインへ戻る事を許されなかった(あらゆる連絡手段も奪われてしまう)。
妻と引き裂かれた事で、もともと身体の弱かった父親は病にかかり他界している。幼いハミエルにとっては、母親によって殺された様なものだと思っており、それが日本人女性への恨み、憎悪へとなっている。
設定段階だと母親がいなくなった本当の理由がちょっと違いますが、この辺りの設定はハミエルルートのプロットを作成する時に随分と変わっています。でも、彼が日本人女性を恨まざるを得なかったという過去を背負った事で、ハミエルのキャラクター性にぐっと深みが増したと思っています。
だから、序盤のハミエルは割と主人公にきつく当たってきますが、実は初期のシナリオだともっと当たりが強かったんですよね。でも女性スタッフから「さすがに心が折れます……」と言われて今くらいになったという経緯があります。おかげでユーザーさんの心を折らずに済みました。
とここまで書きながらPCのデータを確認していたら、多分スタッフも知らない設定メモが出てきましたのでその一部をご紹介します。これ実はハミエル役の加藤和樹さんが収録前にハミエルの生い立ちをもっと知りたいと言われた際に作ったメモなのです。ですから作成したのは開発のかなり後半ですね。
ゲーム内では特に明言されていない内容でもあるので公式設定かどうかは神のみぞ知るですが(つまりは僕しだい)、参考までに。
父親はあまり裕福ではない売れない画家のフランシスコ・ルイス。
母親は日本から観光(バカンス)に来ていた日本人、南条麻里。
ブラナスの海岸に佇む麻里の美しさに惹かれたフランシスコが、麻里に絵のモデルを頼んだのが両親の出会いのきっかけだった。
芸術家肌のフランシスコは、ハミエルの父親とは思えないほど純粋で女性に対しては引っ込み思案な性格だった為、上手くモデルに誘う事が出来ず、最終的には麻里の方から「私を絵のモデルにしてください」と言わせる事になる。
ハミエルの父と母の出会いとか需要なさそうですが僕自身も忘れていたので。……なんか、これだけで一つの物語が作れそうですね。
ハミエル4歳。この頃に、日本にいる母親を探しに行くために船乗りになろうと思っていた。ブラナスの港に行き、地元の漁師の老人と親しくなって手伝いをしていた。
まだ子供らしくて可愛いです。モールス信号はこの時に覚えたのですね。
まぁ、この後に父親も他界してしまって養護施設に行くことになるのですけど……。
中等義務教育の頃になると、学校内で他の学生相手に詐欺まがいの商売を始めるようになる。試験の偽の回答の販売や、個人情報の売買、アルコールや煙草の売買から、デートの斡旋といった内容まで、巧みな話術だけで自分が表舞台に出ることなく、他人を利用して金儲けをしていた。
中等義務教育と言うと12歳~16歳くらいですが、既にハミエル。末恐ろしい子供です。
そして、物語が始まる直前には……
この頃になると、いくつもの偽名、いくつもの顔、いくつもの過去を使い分け、使い捨てて生きている為、徐々に「自分」という存在が希薄になっていて、息をするように嘘を吐き、自分の心さえも嘘で塗り固めたようになってしまっている。
ああ、ハミエルの人格が完成しちゃいましたね。
と、まぁ、このように物語の内容に関係が無いような設定っていうのは、後から必要になった時に作ればいいというサンプルでした。
◆ジブ・ヴァルツァーについて
続いてはパパさんことジブさんです。
実は企画書段階では28歳だったのですが、せっかくならもっと主人公との間に年齢差をつけて、さらには元妻帯者だったということにして……というチャレンジをしてみました。
最終的には38歳ですね。ラミーたちからはオジサンとからかわれますが、正直、僕から見たらまだまだ若者です。
メンバーの中では一番の大人で、何かとまとめ役になる事が多いが、微妙に堅物で説教くさいので、仲間からは「学校のセンセイ」と呼ばれる。
本人は至って真面目なのだが、年齢のせいもあり、微妙に感覚がズレているのも確か。
ラミーやサリィといった若者の言葉や文化にはついていけないで困惑することも多い。
結局は『学校のセンセイ』ではなく『パパさん』になっちゃいましたけどね。先生よりはパパの方がしっくりきます。実際にサリィから見たらギリギリ父親と言えなくもない年齢ですしね。それに、今回は偶然同じ護送車に乗っていた犯罪者という関係性なので、年齢に幅があったとしても対等な仲間関係を築けるのではないだろうかと思って挑戦です。
とはいえ、なんで『パパさん』って呼び方にしたのだろう……?
最初に(シナリオを作る前に)キャラクターがそれぞれ相手をどう呼ぶのかを決める『呼称表』っていうのを作るのですが、サリィは基本的に相手の事を『くん』付けで呼ぶようにしようとは決めていました。でもさすがに『ジブくん』と呼ばせるのも忍びなく、しばらく空欄だったのですよね。かといって最後まで名前を呼ばない訳にはいかないし……追い詰められた僕にサリィが乗り移ったのでしょう。ずっと空欄だった場所に『パパさん』と記入した瞬間、この7人の関係がより強固になった気がしたのです(錯覚かもしれない)。
今回は一人一芸(といっても犯罪行為ですが)取り入れたい、ということも考えていました。となれば狙撃の名手は絶対に外せない! ということで、元警官の狙撃手ということにしました。
銃の名手なら元軍人もありかなと思ってみたのですが、警察に追われるという今回の状況では元警官の方がよりドラマチックだろうし、ジブの実直な性格にもピッタリです。
元、警察の特殊部隊に所属していた狙撃手で、格闘や銃器の取り扱いに長けた戦闘のエキスパート。真面目で正義感が強い警察官だった。警官時代から寡黙で実直な性格で、不器用なくらいに真面目。仲間内では『面白いくらいにつまらない男』と呼ばれていたが、部下からの信頼も厚かった。
そんなジブがどうして犯罪者に……という理由が必要になる訳なのですが、実はこれには結構悩みました。とはいっても現在あるジブの過去を決めるのはそこまで大変じゃなかったのです。ジブという堅物で真面目が取り柄のような警官が犯罪者として追われる事になるとなれば、ああいう理由が一番しっくりと来ますからね。まぁ、かなり酷い内容だとは思いますけど……。
でも、それってつまりただの『冤罪』だよね? という部分に僕はずっと引っ掛かっていました。今回は『無実』の主人公以外は『犯罪者』というシチュエーションであるにも関わらず、一人だけ『冤罪』の人物がいてもいいのだろうか? さんざん考えた結果……ま、いっか!
だって、どんなに考えても警官だった頃のジブが自ら罪(それも殺人)を犯すとは思えないし。そんなことするならそいつはジブじゃない! もちろんキャラクターを捻じ曲げてでも本物の犯罪者にすることは簡単なのですが、それをするならジブじゃなくても良いじゃん、ですからね。
それから元妻帯者ということで避けて通れないのが『元妻を愛していたのか?』問題です。もちろん結婚していたくらいなのだから愛はあったのでしょうが、この部分は実にデリケートなので、D3Pさんからも意見を頂いて今の形に着地しています。
男である僕としてはもう少し過去を引きずっている方がそれっぽいかなと思っていたのですが女性スタッフから「それはツライ」と一蹴されました。……こういう所でも森田のダメさが露呈してしまうようです。
元警察の特殊部隊なので、体格は良く、銃以外の格闘術などにも精通しており、素手の殴り合いになれば、唯一、アッシュに勝つ事が出来るが、よほどの事がなければ本気を出さない。
(暴走するアッシュを唯一止めることができる人物で、逆にいうとジブが暴走したら誰にも止められない)
ジブの暴走……興味深いですが仲間内でそこまでの事にはならなくて良かったです。そういえばアッシュもジブにはそんなに喧嘩を吹っ掛けなかったですし、本能的にコイツヤバいって思っていたのかもしれませんね。
◆ラミー・カリエールについて
お次は世紀の大怪盗ことラミーくん。
企画書段階から『お調子者』と書かれていただけあってチームのムードメーカー的な役割を担ってくれます。
とにかく明るくて、シリアスになりがちな逃亡生活を賑やかな物にするにはこういうキャラクターが必要だろうと思っていました。
しかも『スリ』『鍵開け』『侵入』と、逃げる為には犯罪行為を行う必要がある今回の逃亡劇においては、サリィのハッキングと並んで万能なツールと化しています。
最終的にはラミー自身がピッキングツールみたいになっていましたからね。
そしてこんなに明るく元気なキャラだからこそ、その裏に抱えている問題は重くなってしまうというのは、まぁ必然といいますか、僕の性格が悪いだけかもしれません。
ただ今回のデスペラについては、彼らが犯罪者になった理由っていう部分を掘り下げ、過去を克服するという、ある意味で王道なテーマもあったので、貧しくて金が欲しいからスリになった、みたいな理由にはしたくなかったのですよね。
自由も、希望も、人間としての尊厳も、全てを奪われた少年時代。それでも自分の『心』だけは奪わせなかった事が唯一の誇りであり、心の拠り所となっている。
初期設定でも過去に『金持ちの屋敷にいた』という部分は、実際のシナリオと同じなのですが、例の『薬品』に関する設定はまだ決めてなかったんですよね。あの辺りの設定は、ラミールートのプロットを作成する時に作られた設定になります。
ただ……
その頃、屋敷のメイドの女性だけが彼の心を癒してくれた唯一の安らぎとなっており、その女性にどこか似ている(外見というよりも優しさ)主人公に心を開く様になる。
これ、僕が設定を作ったことを忘れていたが故に、シナリオに入れられなかったのですけど、なんかちょっといい話になりそうじゃないですか? だってこのメイドの女性って、ラミーを屋敷から逃がすために危険なことをして、もしかしたら殺されているかもしれないですからね。そういう過去があったからこそ、ラミーが序盤から主人公の事を何かと気に掛けてくれるっていうのも納得感ありますし。
……まぁ、このように考えた設定だからってなんでもかんでも入れ込まなくても、こうした過去の積み重ねの上に今のラミーというキャラクターがあるのは確かなので、結果オーライです。設定はあくまで設定なので、それがキャラクターの中に生きていればなんでもかんでも説明する必要は無いっていうのが僕の持論ですから(開き直りともいいますが)。
ターゲットにするのは金持ちのみ。泥棒だが汚れた金には興味が無いので、盗んだものは全て燃やすのが流儀。金だろうが、絵画だろうが、アクセサリーだろうが、盗んだものは全て処分する。
相手の命までは取らないが、全財産を奪い、破滅させる事が目的(金持ちと言う理由だけで一方的にターゲットにしてしまうので、行動理念は若干歪んでおり、その部分は主人公に指摘されるまで気づかない)。
確かに序盤のラミーは、相手が金持ちだから盗んでいい、みたいな考え方が強かったですよね。この辺りは成長したのかな……と心配になったのですが、後半の方になると「店で買ってきたから安心してよ」みたいなセリフもちょいちょいあるので、ホッと一安心です。
まぁ、その買い物に使ったお金はどうした? という疑問はあるのですけどね……。
◆カミュ・アインハルトについて
メガネ担当のカミュです(だんだん紹介が雑になってきている……)。
集団の中に必ず一人はメガネキャラがいるというのは、まぁ僕が作る物に限らず大抵のコンテンツがそうなんじゃないかと思いますが、実は世界的に見ても眼鏡使用率って50%以上らしいので、今回の7人組だったら3~4人はメガネキャラがいても良い事になります。
とはいっても、メガネキャラってなんかスペシャル感があるので、やはり一人で十分かなとは思いますが……。
そもそも、メガネ=インテリというのが実に安易な発想なのですが、僕はその安易な発想が大好きです。
ここまで読んでもらった方(あるいはデスペラをプレイしてくれた方)ならお気づきかもしれませんが、僕が作るキャラクターは割とステレオタイプなキャラが多いのです。
例えば『ツンデレ』とか『皮肉屋』とか『寡黙』とか、キャラクターの属性を一言で言ってしまえるようなキャラタイプですね。
もちろん「なにそれ?」みたいなトリッキーなキャラを作る事も出来ない訳じゃないですけど、そういう飛び道具的なキャラってイマイチ愛着が持てないというか、落ち着かないというか……そんな気持ちになってしまうのです。
それにキャラクターの面白さって、結局はそのキャラが何を言うのか? そしてキャラ同士がどう絡むのか? という部分に尽きると思っていますので、キャラクター性にそこまでの変化球は必要ないかなと僕は思っています。
なんて前置きをしておいてなんですが、カミュはややトリッキーですね。というかバリバリ変化球です。せっかくのインテリ眼鏡なのに。
そもそも、罪状『危険物所持』って……普通に危ない人ですからね。
おぼろげな記憶を辿ってみると、企画書の時点ではもうちょっと知的な科学者系の眼鏡男子を想定していたはずなのですが、最終的にはどちらかと言えばマッドサイエンティストに。しかも『愛の地球戦士』って……。
日本人である主人公と接点を持たせるために、日本のアニメカルチャー好きという属性を与えたのに、それが逆に仇となってなかなかコミュニケーション出来ないという有様ですからね。どうしてこうなった? ちょっと初期設定をひも解いてみよう。
特殊な家庭環境から普通の学校にも通っておらず(家庭教師による教育)、同世代の友人が一人もいない為、基本的に人付き合いやコミュニケーションが極端に苦手。
ここまでは良いです。ああいう家庭環境では人と付き合う事が苦手になるのは無理ないと思いますしね。
唯一の理解者であった母親が病死した中学生くらいの頃から、心の孤独を埋めるために、日本のアニメやゲームというオタクカルチャーにのめり込む様になる。
う、うん。まぁ、これもきっかけとして無くはないでしょう。
美しい自然を守るため、彼がとったのはまさに『革命』という名の犯罪。父親や、それに賛同する政治家、企業へ対しての妨害活動を開始する。革命の最初のターゲットにしたのは、市内に建ち父親が生活するアインハルトビルの爆破予告事件。
この時点ではまだ自宅が『ビル』という設定でしたが、実際にはしれっと『屋敷』になっているのはご愛敬です。そもそもハルシュタットってビル街があるような雰囲気の街並みではないですからね。
この爆破予告事件について『愛の地球戦士』という名でマスコミに対して犯行声明を出すものの、父親にあっさりと正体を見破られ、悪戯としてもみ消されてしまう。
急に出ました『愛の地球戦士』! いかにも僕らしい勢い優先のワードです。まぁ、勢いって大事ですからね。
というのも僕の仕事って最終的にはユーザーさんに楽しんでもらう事なのですけど、その前段階として社内のスタッフや、D3Pの担当者さんを楽しませる(期待させる)必要がある訳なのですよ。だって、自分の周りにいる人が面白いと思ってくれない物を、ユーザーさんが楽しんでくれるはずがありませんからね。
だからこういう一見トリッキーに見える設定をねじ込むのも、ただの勢い優先のネタではなく、僕なりの戦略なのです。
本人は本気で自然保護のための革命を起こしているつもりだが、中途半端に日本のアニメやゲームの影響を受けてしまっている為、変なところで演出過剰になってしまい(無駄なロゴマークとか)、ワイドショーのネタ程度にしか扱われないことも多々ある。
あ、僕自身もネタって認めちゃっていますね。でも、とてもカミュらしいので結果オーライです。とはいえキャラ設定を作っている段階では、まさかカミュルートの最後があんな展開になるなんて想像もしていませんでしたからね。愛の地球戦士バンザイです!
カミュは言動がトリッキーになりがちな分、内面は本当に純粋で綺麗に描こうというのは最初から決めていました。主人公の事を本気で心配してくれますし、怒ってくれるし、言葉を飾らないで素直な想いをそのまま伝えてくれます。
男にしては珍しく、ちゃんと気持ちを言葉に出来る好青年です。そもそもリアルの男って『好き』とか『愛している』とか普通はそんなにポンポンと言わないですから(むしろポンポン言う男って信用できない。……というのはそんな事を言う機会のない森田の個人的な意見ですが)。
そして、ご多分にもれずデスペラのキャラたちもその辺りは苦手なのですが、カミュだけは自然とそういう事を言えてしまいます。
まぁ、それだけだとさすがに僕が恥ずかしいので、ついギャグというオブラートに包んで照れ隠ししてしまうのはご容赦ください。
◆サリィ・デル・テスタについて
サリィについては……何を書いても盛大なネタバレになりますね。と、書いている段階でなんらかのネタがあることをバラしているような気もしますが……。
あまり核心に触れないで語るとすると、サリィの設定については企画当初から決めていました。つまりあの過去の部分です。取り返しのつかないあの過去があって今のサリィが存在している、というのはどうしてもやりたい部分だったので。
正直、あの設定を乙女ゲームでやる必要ある? と自分でも思わなくも無いのですが、あれが無いと普通に可愛いだけの妹キャラクターで終わってしまいますからね。
そもそも乙女ゲームの攻略キャラに一人だけ女の子が混ざっている時点で、他のコンテンツとの差別化の為の色物キャラとして扱われてしまいそうですし、それは僕の本意じゃなかったのです。
じゃ女の子を入れるなよ、とも思うのですが、6人の犯罪者全員が強面の男達って、もう僕が主人公なら即行で逃げ出します。そしたらシナリオがプロローグで終わっちゃうし!
今回、逃亡生活というスリリングな『非日常』を描きつつも、その合間の『日常』感は絶対に外せなかったので、犯罪者の中にどうしても一人は女の子が必要だったのです。主人公と近いポジションの女の子が一人いるだけで、非日常の中にも日常的な安心感を表現できますからね。
少なくともメンバーの中にサリィがいなかったら、主人公があの逃亡生活を受け入れるまでに、もっとたくさんの時間が必要だったとは思います。
とはいえサリィルートの展開は、ユーザーさんによっては「嫌だ」と思われたかもしれませんし「もっと普通の百合ルートかと思っていた」とガッカリしたかもしれません。実際、企画段階でも「普通の百合ルートにしたらどうですか?」という意見が無かったわけじゃないのですが、その部分は初志貫徹です。
普通はもうちょっと実際に遊ぶユーザーさんの気持ちを考えて、これなら楽しんでくれるかなぁ、と思いながらキャラクターやシナリオを考えるのですが、サリィに関しては正直、僕がやりたかったことを割とストレートにやらせてもらいました。これは最初にちょっと書いた『平均点のなんとなく良い感じ』では得られない体験をして欲しかったからからかもしれませんし、作り手のエゴかもしれません。
別に残酷な展開をすることが目的ではなくて、自分という存在をあそこまで捻じ曲げざるを得ない過去を背負っているからこそ、あのサリィというキャラクターは生まれたかな、と思っていますので。
それでも、あの展開があるからこそサリィはサリィとして生きて行けるし、仲間と出会った意味があるのではないかなと思っています。たぶんサリィは主人公を含めたあの仲間たちに出会わなかったら幸せにはなれなかったでしょうから。
って、サリィルートをプレイしてない人には意味不明な内容ですけど。
サリィと言えば天才ハッカーです。僕が作るハッカー系キャラはちょっと万能すぎるくらい優秀でなんでも出来ちゃうから、シナリオの展開に困ったらつい頼ってしまいがちなのですよね……だって便利なんだもの。
そんな訳で、サリィは物語全般にわたって大活躍します。
自分がやっている事に罪の意識がない、天才的なハッカー(正しくはクラッカー)。
善悪の概念が完全に破綻しており、お腹が空いたらご飯を食べたり、眠くなったら寝たりするように、普通の感覚で犯罪を行う。犯罪=生活の一部なので、犯罪を楽しんですらいないという、犯罪者としては一番怖いタイプ。
サリィの特徴としてとにかく無邪気で、犯罪を犯罪と認識していないという設定にしています。ハッキングすることになんの罪悪感も抱かないというのはある意味で怖いのですが、そうなった背景として自分自身のハッキングによって取り返しのつかない事をしてしまったという『罪の意識』から逃れる防衛本能があるからなのですよね。ハッキングが悪い事だと認めてしまったら自分自身の罪を認めることになってしまいますから。
それでも自分自身の罪と向き合う事で、その考えも徐々に変わっていきます。最初の護送車の中で出会ったサリィと、物語終盤のサリィではその辺りもずいぶんと成長しているんじゃないかと思いますが……どうでしょう?
◆主人公について
最後は主人公です。
乙女ゲームに限らないですが、主人公というのは地味に設定するのが難しいキャラクターです。プレイヤーの分身であるから悪目立ちはしたくないけれど、それなりの個性は出したいというジレンマとの戦いとなるからです。
主張はし過ぎないけれど、しっかりと個性は出したいし、プレイヤーの分身でありつつも、一人のキャラクターとして受け入れてもらえる。これはもう理想論というより根性論ですね。
そもそも僕は主人公の一人称で物語が進むことにこだわりたいので、「主人公がウザい」と思われてしまっては大変です。主人公を好きになれないノベルゲームをプレイするほど苦痛なことは無いですからね。
もちろん万人に好かれ、受け入れられる主人公を生み出せるというのが理想ですが、こればっかりは世に出してみないと分かりません。それ以外の方法があるなら知りたいくらいですからね……。
ということで少なくとも嫌われないようには描かなければならない訳です。それでいて無個性すぎてツマラナイと思われないように……いつも、これ無理ゲーじゃね? となります。
特に今回は序盤、周りが犯罪者ばかりという状況で、一人だけ『良い子ちゃん』にならざるを得ないので、一歩間違えばただのウザい人になりかねません。かといって犯罪者達が好き勝手に犯罪行為するのを見て何も心を痛めないというのも人として問題です。
でも毎回否定してばかりいると、「この非常事態なんだから空気を読めよ」とも思いますし……。
なので、序盤は戸惑いつつもあくまで善人であろうと振る舞い、徐々に逃亡生活に馴れてしまい状況に流されていく……ということになるのですが、それでも意識したのが以下の点です。
最初から最後までブレないのは『悪いことは悪い』と言える点。これは正義感や倫理観、法律的な観点ではなく、人として『悪い』ことは許さないという信念。
だから男達が過去に犯した罪、新たに犯す罪に対しても、許せる部分と許せない部分をハッキリと言える。全てダメでも、全てが良いでもなく、彼女なりの信念で良い悪いを伝えることで、男達も徐々に心を開いていく事になる。
その結果かどうかは分かりませんが、最終的にずいぶんと逞しくなりました。というか、今回の物語で一番成長(変化)したのは主人公でしょうね。良くも悪くもですけど。
そんな主人公の成長・変化を体感できる要素として、『ミッションパート』というシステムを入れて、主人公(プレイヤー自身)が自らの意志で犯罪行為を指揮しなければならないという状況を用意しています。
ただ仲間に指示を出しているだけなのですけど、一つ一つの選択が仲間と一緒に背負うべき『罪』であることを主人公と一緒に噛みしめて欲しかったのですよね。
だから、基本的には成功しないと先に進まない作りのミッションパートにもかかわらず、わざわざ白い羽根が黒く染まるエフェクトを入れて、主人公にだけに『罪』を現すパラメータがあるのです。
デスペラのシナリオって、男たちの好感度をほとんど上げないまま進めることはできますが、主人公の犯罪度をまったく上げずに進めることはできませんからね。つまりそういう事です(どういう事かは僕にも分かりません)。
とにかく、しっかりと噛みしめてください!
……さて、ネタバレありますと言いつつも、なんとなくボカシてしまって煮え切らない文章になってしまったかもしれません。盛大な裏話を期待してくれた人には申し訳ありませんが今回、僕の文章はオマケです。コザキさんの設定画をお楽しみいただけたでしょうか?
そもそも、不特定多数の方が見るだろう公共の場だと、ついつい「お楽しみはゲーム本編で」って思考が働いてしまうのは作り手の悲しい性ですね。
ということで既にもうお腹いっぱいだと思いますので今回はここまで!
お疲れ様でした!
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